Designer / デザイナー Kenya Hara 原 研哉
Kenya Hara デザイナー / 原 研哉

PROFILE

1958年生まれ。
グラフィックデザイナー。日本デザインセンター代表。武蔵野美術大学教授。
日本という場所に根ざしたデザイナー。日本ならではの図像や哲学を、その歴史からとらえたところから行き着いた「エンプティネス」という考え方をクリエイションの中心に据え、それに沿ってビジュアルの方向性やコミュニケーションを定義する。
デザインの領域を、数々の展覧会や作品によって探究し続ける。広告、サイン設計など、受賞多数。
近著「デザインのデザイン」(岩波書店)は昨年度のサントリー学芸賞を受賞しており、デザインの分野を越えて多くの読者を持つ。

INTERVIEW

原研哉氏のインタビューから、原氏とパトリックによってKENZO POWERが創られていくプロセスが伺えます。 パトリックのクリエイションが始まるとき、そこには、ただ、絵コンテかフィルムのような、彼の描く世界観をイメージで表現したものがあるだけです。オリエンテーションでは、それを調香師やデザイナーに見せ、ストーリーを共有するのです。 しかし、その共有を確固たるものとすることで、そのクリエイションは、ピュアであり、パトリックが思い描いたそのもの、または、それ以上の作品として、創りあげられていくのです。 ここでは、原氏が感じたKENZOブランド、そして、ボトルやパッケージについて語っていただきました。

あなたが思うKENZOとは?

KENZOは、色がすごく印象的だと思いましたね。
KENZOも色々何世代かあるんだと思うんですけれども、もともと持っているイメージは、とても色がきれいだ、というような、女性的で色がきれいだ、という印象が、僕の中にはずっとありましたね。
特に最近は、フラワー バイ ケンゾーのポピーの花が出てからは、なんとなく街を歩いていても、パッとあの色が目に飛び込んでくるので、非常に色に対してポジティブなイメージを持ったブランドだな、と思ってましたけどね。

KENZOとの仕事はどうだった?

パトリックに最初、この香水は誰が使うんだ、どういうターゲットを目的にしているんだ、ということを訊くと、そんなものはないっていうんですね。
僕らはとにかく、いい香水をつくれば、すばらしいイメージのものをつくれば、それを好きな人が買ってくれる、と。
ターゲットはないんだ、って言われたときに、結構、それは新鮮でしたね。
やっぱり、デザインっていうものは、ある程度、ロジカルなものだから、誰が使うか、どういう風に使うか、どんなユーザーの層がいて、どんな人たちを対象に、どんなマーケティングをして、そこに売っていくかっていうことが、精密に語られて、定義されて、そこにピンポイントで着地するようなことを、いつも要求されるんですけれども、今回は、着地場所なんか無い、と。
要するに、最高のいいジャンプをしろ、ということだけ言われているわけですから、そこらへんの発想が今まで無かったっていうかね。
そんなディレクションは受けたことが無いので、その自由さにあきれた、というか、そういう風な商品のつくり方もあるんだな、と。でも、それはそれで、すごく正解だな、と思いましたね。

ボトルデザインについて

クリエイションの根源はパトリックの方にあるんだと思うんですけれども、僕は、「白金」という日本酒のボトルをつくったわけですね。
これは、とてもシンプルなものなんですけれども、僕の頭の中では、あるボリュームとして、720mlというお酒を入れる容器として、頭にすごくくっきりと定着していましたので、それが香水瓶って言われたときに、んー、と。
お酒が香水になりうるか、という疑問符の方が先に浮かんだわけです。
ですけれども、イメージに順ずるものを沢山スケッチで出してみたんですけれども、もともとの白金のボトルの持っている、それこそ原型性っていうかね、これ以上無いくらいシンプルな、どこかで見たことあるけれども、新鮮で、忘れられないフォルムになっている、ということは、なかなか乗り越えられなくてね。
だから、そういう原型性みたいなものが、やはり、気にいられているんだな、ということが理解されたと同時にね、彼らが小さなモックをつくっていたんですよね。
その小さな模型を見たときに、僕は、あっ、とわかったんですよ。
要するに、僕の頭の中では、その720mlのボトルがずっとあったんですけれども、それが実際の香水のサイズになってみると、全く違うリアリティになってくるんだ、とその時に腑に落ちて。
それで、僕の中では、同じ一つのフォルムが、あるボリュームで日本酒のために起用されて、あるボリュームでパフュームになっていく、ということは、ありえるんだな、と思ってね、そのときに、はっと、頭で解決がついたんですね。

パッケージデザインについて

パフュームの箱というのは、比較的集積されて展示をされることが多いので、特徴をちょっと出したいと。だけどあまり大げさな形の主張はしたくない、ということで、極最小限の工夫でどんなことができるかな、と思ったときに、上にむかって少し傾斜角をつけたんですね。
傾斜角をわずかにつけることで並んだときにわずかに上から側面に光が入ってくる、と。
本当に微かに工夫なんですけれども、決定的にすごく大きな印象がうまれてくるので、そこはぜひやりたいということでお願いをしました。
形態的には生産するのが意外と難しいんですけれども、そこはパッケージメーカーの努力によって、比較的きちんとできたかな、と思います。

紙素材も、何にも無いように見えますけれど、素材の手触りや質感というのは、とても重要です。
これは、ふっくらと、デボッシングという、文字をドンと押し付けて凹ませて表現し、凹んだところがなおかつ半透明なるという紙を使っているんですね。
日本で僕は、そういう押し付けると半透明になる紙を開発したことがあって、その紙を使いたかったんですけれども、ヨーロッパにその紙を運ぶのが大変で、似たような紙を探したんですけれども、確かにかなりいい紙が見つかったんですね。
ヨーロッパというのは、紙加工の技術に関しては昔から高いものが保存されていて、その技術力は大したものだな、と。
それは、日本が優れていると、僕はずっと思い込んでいたんですけれども、必ずしもそうではない、ということを思い知らされました。